経歴
1982年生まれ。岐阜県出身。建築関連の会社にてコンクリート製品の品質管理業務に従事。
2013年、フロロテクノロジーに入社。
好きな物:猫、コーヒーゼリー、腕時計
苦手な物:早起き、自動車の運転
更新:2021.9.20 公開:2019.1.15
フッ素樹脂コーティングは、多様な特性を持っていることが特徴です。その特性によりいろいろな問題解決ができる分野も広く、様々な製品機能の向上が期待できます。
今回はフッ素樹脂コーティングの特性の解説に加え、安全性についても合わせてご紹介します。フッ素樹脂コーティング剤の導入のご参考になれば幸いです。
目次
フッ素樹脂は、フッ素原子と炭素原子が結合したユニットを構造内に有する高分子化合物です。フッ素樹脂は特異的な表面特性として非粘着性、耐酸性、低摩擦性、撥水撥油性などに加えて耐熱性を有するため、フライパンやアイロン、薬品用配管の内面などに使用されており、工業的にも利便性の高い表面加工として多方面に利用されています。
一般的なフッ素樹脂加工は、専門の工場で焼き付け型のフッ素樹脂を300℃以上の高温で処理して表面加工されます。
ですが、フッ素樹脂加工については以下のような欠点があります。
このフッ素樹脂加工の欠点を補うべく、専用の分子設計をすることにより開発されたものが「常温型フッ素コーティング剤フロロサーフ」です。 常温型フッ素コーティング剤は、製造現場などで手軽に塗布できるコーティング剤であり、撥水撥油・防汚・防水・防湿・摩擦低減など、フッ素樹脂加工と同様の表面特性(耐熱性を除きます)を、透明な皮膜で得ることが可能です。
常温型フッ素コーティング剤の特性を活かした使用用途としては以下のものがあります。
簡単に塗布できる多様な利便性を持った常温型フッ素コーティング剤は、大きな魅力を持ったコーティング剤と言えるでしょう。
フッ素樹脂は元素の組み合わせによって、以下のように種類が分けられます。
名称 | 特徴 |
---|---|
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン) | 高い耐熱性・非粘着性・耐薬品性を持ち、フッ素樹脂全体で最も高いシェアを持つ。 |
PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体) | PTFEの特徴に加え、溶接加工や成形加工もしやすい。 |
FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体) | PTFEよりも耐熱性は低いが、PTFEの室温転移点がなく体積が安定している。 |
名称 | 特徴 |
---|---|
PVDF(ポリビニデンフルオライド) | 耐化学薬品性もあり、紫外線にも強く工業分野で使用されている。 |
PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン) | 透明性が高く、水蒸気やガスを通しにくいため化学分野で用いられる。 |
ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体) | 強靭で電気絶縁性にも優れ、コーティングや化学タンクなどに使われる。 |
ECTFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体) | 電気特性や高温下でも強度を保つなどメリットはあるが、日本ではほぼ使われていない。 |
PVF(ポリフッ化ビニル) | 耐候性が高く、太陽電池のバックシートに使われる。 |
それぞれのフッ素樹脂について、より詳しい説明はこちらのページで解説しております。
フッ素樹脂がどのような分野で使われているか知りたい方は、ぜひ合わせてご覧ください。
それでは、常温型フッ素コーティング剤が持つ、多様な性能について具体的に解説していきます。一般的に、以下のような特性が挙げられます。
「撥水撥油性」とは、水や油を弾く性質のことを指し、主に以下のようなシーンで効果を発揮します。
常温型フッ素コーティング剤は「防湿絶縁性」が高く、また、表面の皮膜が化学変化の影響を受けにくいことから「耐酸性」も高い抑制があります。以下のようなシーンでも効果を発揮します。
どのような薬品の耐性を持たせる必要があるのかにより、選ぶフッ素コートの仕様が変わります。そのため、事前の打ち合わせが必要なことに注意が必要です。
常温型フッ素コーティング剤の「防汚性の高さ」は、表面張力の低さが関係します。表面張力が低いことにより、汚れの吸着力も低くなるため、汚れが付きにくく除去もしやすくなります。
「防汚性」は主に以下のようなシーンで効果を発揮します。
常温型フッ素コーティングの被膜は「屈折率の低さ」が特徴の1つです。これは、光学的な屈折率が低いことで反射光を減らすことができ、透過する光の量を増やせることを意味します。
「屈折率の低さ」は主に以下のようなシーンで効果を発揮します。
太陽光パネルなど屋外で使用される製品では、撥水性や防汚性なども同時に備えていることも重要となるため、フッ素コーティングの使用が有効です。
常温型フッ素コーティングを施した表面は、摩擦係数が低くなる「低摩擦性」を持っています。
「低摩擦性」は主に以下のようなシーンで効果を発揮します。
常温型フッ素コーティングは粘着性・付着力が低いことから「高い離型性」という特徴を持ちます。樹脂成形用の金型などに利用することで、樹脂やゴムの付着を低減することができ、生産性を向上することができます。
「離型性」は以下のようなシーンで効果を発揮します。
より薄い膜厚のフッ素コーティングを選ぶことで、微細な形状をしている金型でも正確に離型が可能となります。製造現場で塗布できる製品であれば、再塗布や金型を追加した際でも簡単に離型性を持たせることができます。
フッ素コートを含めたフッ素系化合物は「450℃以上の高温下で有毒ガスを発生させる」などと、その危険性を指摘されることがあります。
しかし、フッ素樹脂加工や常温型フッ素コーティングに使われているフッ素樹脂は安全な物質です。
上記はフッ素化合物が有毒である・危険であると言われる理由ですが、これらは科学的観点から見れば、事実と異なることがわかります。
そもそも有機化合物の安全性は、その分子量により大きく変わります。
低分子・中分子化合物 |
低分子・中分子の化合物の多くは室温で液体・気体・粉末の状態で、水や油・溶剤に溶けやすい性質があるため、体内に取り込まれやすく有害性が高くなります。 物質例:界面活性剤や接着剤など |
高分子化合物 |
高分子化合物は室温下において個体で安定した状態を保ちます。また、水や油・溶剤にも溶けにくいことにより、生体内に取りこまれることがなく、有害性が大幅に低くなります。 物質例:プラスチック・フッ素樹脂など |
PFOS・PFOAとフッ素樹脂はともにフッ素化合物ではありますが、PFOS・PFOAは低分子化合物に属し、フッ素樹脂は高分子化合物に属します。同じ原子構造を持った物質でも、分子量によって性質も毒性は全く異なってまいります。
最近では、業界内では自主規制などの努力により削減・根絶を目指し、フッ素樹脂加工やフッ素コーティングに規制値以上のPFOS・PFOAは含まれていません。
フッ素樹脂の耐熱温度は450℃です
フライパンを空焚きすることでこの温度を超えてしまい。有毒な化学物質を放出する可能性があります。
食材や油などを加えた状態ではこの温度を超えることがない(せいぜい200℃くらい)ため、通常の使用には問題がありません。
フッ素コーティングは様々な性能を同時に付随させることができることから、企業や製品で広く利用されています。また、不安視されがちな安全性についても証明されています。
ここまで紹介したフッ素コーティングの特徴や利用例を参考に、製品の性能そのものを向上させられるフッ素コーティングのご利用をご検討いただければ幸いです。
常温環境で簡単に塗布できるフッ素コーティング剤は、フロロテクノロジー「フロロサーフ」を御覧ください
詳しくはこちらのコラムで説明しております。
経歴
1982年生まれ。岐阜県出身。建築関連の会社にてコンクリート製品の品質管理業務に従事。
2013年、フロロテクノロジーに入社。
好きな物:猫、コーヒーゼリー、腕時計
苦手な物:早起き、自動車の運転
フッ素樹脂は、工業で広く扱われている素材です。耐薬品性・耐熱耐寒性・表面平滑性・耐摩耗性など優れた性質があるため、さまざまな分野で活用されています。
撥水撥油加工は水や油から製品を保護する機能により、重要な役割を果たします。
撥水性を考える上で、「防水」「耐水」との違いに疑問を持つ方も多いでしょう。
電子回路基板やプリント基板の品質を保つうえでは防湿コーティングは重要な工程の一つです。防湿コーティング剤には様々な商品があり、塗布方法も多種多様なため、どの製品を選べばよいのか悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
様々な電気機器に使用されるプリント配線板や実装部品では、以下のような物質の存在や現象が回路の短絡や断線、電流漏洩などの不具合を引き起こすことがあり、機器の動作不良や故障の原因となります。
多様な性能を持つフッ素樹脂加工やフッ素コーティングは、自動車・住宅の外壁・電子部品の基板保護など、広く使用されています。そのため、導入を検討している企業様も多いでしょう。
フッ素樹脂コーティングは、多様な特性を持っていることが特徴です。その特性によりいろいろな問題解決ができる分野も広く、様々な製品機能の向上が期待できます。
多様な性能を持つフッ素樹脂加工やフッ素コーティングは、自動車・住宅の外壁・電子部品の基板保護など、広く使用されています。